精液検査

精液検査所見について

精液検査の基準値
WHOラボマニュアル ーヒト精液検査と手技ー 第5版より

検査項目
下限基準値
精液量 1.5mL以上
精子濃度 1500万/mL以上
総精子数 3900万/射精以上
前進運動率 32%以上
総運動率 40%以上
正常精子形態率(厳密な検査法で) 4%以上
白血球数 100万/ml未満

WHO(世界保健機関)の基準値とは2010年にHuman Reproduction Update誌に掲載された『ヒト精液所見におけるWHO参照基準値』という論文が基となっています。3大陸8カ国から得た400〜1900人のサンプルを対象に、パートナーが1年以内に妊娠した男性を正常精液所見と定義し、その検査値を解析し、状態の良い方から順番に並べて、下から数えて5%目にあたる値を基準値としています。(ちなみにこの中に日本人のデータは含まれていません。)

 

パラメーター(単位)
パーセンタイル
2.5
5
10
25
50
75
90
95
97.5
精液量(mL)
1941
1.2
1.5
2.0
2.7
3.7
4.8
6.0
6.8
7.6
総精子数(百万/射精量)
1859
23
39
69
142
255
422
647
802
928
精子濃度(百万/mL)
1859
9
15
22
41
73
116
169
213
259
総運動率(PR+NP, %)
1781
34
40
45
53
61
69
75
78
81
前進運動率(PR, %)
1780
28
32
39
47
55
62
69
72
75
非前進運動率(NP, %)
1778
1
1
2
3
5
9
15
18
22
不動精子(IM, %)
1863
19
22
25
31
39
46
54
59
65
生存率(%)
428
53
58
64
72
79
84
88
91
92
正常形態(%)
1851
3
4
5.5
9
15
24.5
36
44
48
Cooper et al., 2010 提供

 

上の表のパーセントタイルの左から2番目の数字がWHOの設定している基準値に合致します。簡単に言いますと、1年以内に妊娠が成立したカップルの男性100人の精液所見を、データの良かった順に並べて上位95人がこの基準値以上であったということになります。そのためポイントして以下のことを念頭に置く必要があります。

  1. この基準値を上回っていれば、必ずしも妊娠が保証されるわけではない
  2. この基準値を下回っているからといって妊娠が望めないわけではない。

実際に数字を突きつけられますと、それが絶対的なものと受け取りがちですが、WHOの基準値は多くの精液検査から参考として出されたもので、あくまでも“目安”と考えるべきものです。
そこで当院ではWHOの基準値も参考にしながら、精子の直進高速運動性を重視し、 SQA検査 を併用し治療法を選択する参考にしています。

 

【精液検査の方法】

3日間ほどの禁欲期間の後、お渡しした容器にマスターベーションで採精していただきます。ただし、コンドームはご使用にならないでください。なるだけ冷やさずに、できれば3時間以内にご持参ください。禁欲期間が長すぎると運動率が低下する傾向があります。ご希望があれば当院の採精室をご利用いただくことも可能です。
精子は精巣で通常2ヶ月半ほどかけて毎日新しく作られています。我々にも体調の良し悪しがあるように、精液所見は常に一定ではありません。1度目の検査で悪く出ても、次回は改善していることもありますので、できれば3回ほどお受けになることをお勧めします。またプレコンセプションケアにお示ししている注意点なども参考に食生活や生活習慣を見直すことや、サプリメントなどの併用もお勧めしています。