体外受精、顕微授精などの生殖補助医療 (ART)
■顕微授精
精子の状態が極端に悪い場合や、通常の体外授精で受精しない場合、顕微鏡下で特殊なピペットで一匹の精子を卵細胞質内に注入して授精させる方法です。現在では卵細胞質内精子注入法(ICSI)が一般的です。
【PICSIとICSI】 PICSI(Physiological intracytoplasmic sperm injection) はHA-ICSIとも呼ばれますが、精子を前もってヒアルロン酸で処理しICSIを行う方法です。 ヒアルロン酸は卵子における透明体の主成分で、卵子を取り巻く卵丘細胞の表面はヒアルロン酸に覆われています。精子は機能的に成熟すると卵子細胞膜上のヒアルロン酸に付着するレセプターが出現します。 一方、未熟な精子にはこのレセプターが出現しません。またこれまでの研究から精子の成熟度が高いほど染色体異常率が低く、DNAの断片化が少ないことが明らかになっています。本来の受精過程では成熟精子のみが卵子の透明体に付着・貫通して受精が起こります。これによってDNAの状態が良好で染色体異常の少ない精子が選別されています。PICSIはこの成熟精子のみが持つヒアルロン酸に付着する特性を利用し成熟精子を選別しICSIを行う方法です。
LANCETという著名な学術雑誌(2019.2)にPICSI群(1381例)とICSI群(1371例)について臨床的妊娠率・出産率・流産率を比較した報告があります。流産率についてPICSI群では4.3%、ICSI群では7.0%と有意差が報告されております(P=0.003)。このことよりPICSIは従来のICSIと比較して流産リスクを減少させることができるといえます。
■胚培養
当院では受精卵の培養は タイムラプス培養器 にての培養をお勧めしております。(先進医療) またご希望により GM-CSF含有培養液 を使用することもできます。
■胚移植
受精後、胚の分割が順調にすすめば胚移植を行います。胚移植には採卵後2~3日目(4~8分割)に行う初期胚移植と5~6日目に行う胚盤胞移植があります。 また、二回に分けて胚移植をおこなう二段階胚移植や採卵の際の培養液を凍結保存しておいて融解胚移植の前に子宮内に注入するSEET法などがあります。
■受精卵凍結・融解胚移植
たくさんの受精卵が得られた場合、これを胚移植せずにこれを凍結保存しておき、採卵周期以外に胚移植する方法です。
■孵化補助(AHA)
受精卵の透明体が厚く硬くなって、細胞質が透明帯を破って脱出できずに着床できないことがあります。このようなときに、レーザーにて 透明帯を薄くしたり開孔させたりして孵化を助ける方法です。