医療法人授幸会 久永婦人科クリニック
 
           
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不育症

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不育症とは

2回以上流産・死産を経験した場合を不育症(recurrent pregnancy loss)といいます。ただし異所性妊娠(子宮外妊娠)や絨毛性疾患は流産回数に含めません。不育症に習慣性流産(3回以上の流産)と反復流産(2回の流産)は含まれます。 (流産は妊娠21週6日までの胎児死亡、死産は妊娠22週以降の胎児死亡)

生化学的妊娠(biochemical pregnancy)は日本と米国(ASRM;American Society of Reproduction Medicine米国生殖医学会)では妊娠回数に含みませんが、欧州(ESHRE;European Society of Human Reproduction and Embryologyヨーロッパ生殖医学会)では2017年にガイドラインが変更され妊娠回数に含めています。

日本においても2021.3.31に発表された『不育症管理に関する提言2021』で「生化学的妊娠を3回以上反復する場合を反復生化学的妊娠として不育症に準じた原因検索を行う。」と提言しています。

一方で、日本産科婦人科学会のガイドライン(産科編2020 CQ204)では「原因の有無に関わらず流産の連続が2回の場合を反復流産、3回以上の場合を習慣性流産と呼ぶ」と『連続性』に言及していますが、ASRMとESHREでは連続性を不育症の条件とはしていません。夫婦染色体構造異常に起因する不育症では、出産を交えて流産が不連続に起こることがしばしば経験されます。したがって生児がいても、また流産が不連続に起こっていても、夫婦染色体検査を行う意義はあり、不育症の概念に合致していると考えられます。

不育症検査は2回以上の流産・死産を経験した患者に勧めることになりますが、不育症の主要なリスク因子である抗リン脂質抗体症候群の臨床基準に「1回以上の妊娠10週以降の原因不明子宮内胎児死亡」という項目があるため、このような流・死産歴が1回でもあれば不育症に準じて扱うべき、と考えられています。

【不育症の頻度】

日本人では2回以上の流産を経験する頻度は4.2%、3回以上の流産を経験する頻度は0.88%といわれています。我が国では2回以上の流産を経験した不育症患者が約3.1万人存在し、そのうち約6,000人が3回以上の流産を経験していると推定されます。不育症の症例は毎年蓄積していくので、正確なデータはありませんが、日本における不育症患者数は30〜50万人程度とも推定されています。

不育症のリスク因子の頻度

 

【不育症の検査・スクリーニング法】

<推奨スクリーニング>

  1. 問診
    年齢・流産回数・身長・体重・BMI・喫煙歴・アルコール摂取歴などを確認いたします。

  2. 子宮形態異常
    子宮形態異常の有無について超音波検査及び、子宮卵管造影検査・SHG(sonohysterography)等を行います。

  3. 内分泌検査
    甲状腺ホルモンの検査(TSH,TPO抗体、FT4)を検査します。
    PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、プロラクチン値、AMH値については不育症との関連性がないため、一次検査としては施行しません。

  4. 夫婦染色体検査
    夫婦の染色体の構造異常により、流産率が増加することが知られており、染色体異常は不育症のリスク因子となります。
    ただし、ご夫婦のどちらかに異常があるかを特定することは、ご夫婦にとって必ずしもメリットにつながらない可能性があります。

  5. 抗リン脂質抗体
    抗リン脂質抗体は流・死産、妊娠高血圧腎症と関連があるため、推奨されます。
    抗CLβ2GPI複合体抗体
    抗CLIgG抗体
    抗CLIgM抗体(保険適応外)
    ループスアンチコアグラント

  6. 選択的検査
    プロテインS活性
    第Ⅻ因子活性
    抗PEIgG
    抗PEIgM
    流産検体の病理学的検査
    流産検体の染色体検査

不育症のスクリーニング検査を行っても約50%以上で原因が特定できません。
また現時点では、反復・習慣性流産の場合、確立された治療法はありませんが、 無治療でも既往流産2回では80%、3回では70%、4回では60%、5回では50%が妊娠継続可能です。ただし6回以上では予後は不良となります。
検査方針や治療方針などの詳細をお知りになりたい方は、日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業「不育症の原因解明、予防治療に関する研究」班が公表している『 不育症管理に関する提言2019(患者様用) 』をご参照下さい。

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