医療法人授幸会 久永婦人科クリニック
 
           
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AMH(抗ミュラー管ホルモン)
卵巣予備能検査

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■AMHとは?

AMH(抗ミュラー管ホルモン:アンチ・ミューレリアン・ホルモン)とは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣予備機能を知る指標になると考えられています。卵巣の中には、生まれつきたくさんの原始卵胞があり、生理が来て排卵がおこりだすまで眠っています。初経の頃より原始卵胞が活発化し、
発育卵胞 → 前胞状卵胞 → 胞状卵胞 → 成熟卵胞 と成熟し、約190日かけて排卵します。AMHは前胞状卵胞から分泌され、その測定値と発育卵胞の数は相関します。従って、AMH濃度を測定することによって、残存する卵胞の数を測定し、卵巣の予備能を推定することができるのです。卵胞の成熟を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)も卵巣予備機能の指標となるホルモンです。卵巣機能が低下すると上昇することが分かっていますが、FSHは月経周期によって大きく変動するため、FSHの値から卵巣予備能を正確に予測することは困難です。従ってAMHの測定は、最も早く正確に卵巣予備機能の低下を感知できる検査と考えられます。発育卵胞の数は25歳~30歳をピークに年齢とともに減少し、同時に血液中のAMH濃度も減少していきます。 AMH低濃度では、自然排卵が起こりにくいだけでなく、不妊治療の際に排卵誘発に反応しないことが多くなり、タイミング療法や人工授精、体外受精を予定していても、卵胞が発育しないため治療を断念せざるを得ないという事態が懸念されます。そのようなことを避けるためには卵巣予備能を把握しておくことが重要です。また、卵巣内の発育卵胞数を知ることによって適切な排卵誘発法を選択することができるため、卵胞が育ちすぎて卵巣が腫れてしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを下げることができ、効率良く治療を進めることができます。
「卵胞発育数、採卵数」と「抗ミュラー管ホルモン(AMH)値」とは相関しているとされています。つまり、「その数値は卵巣内に残されている卵子の数を反映する」ということになります。数値が低いほど発育卵胞数、採卵数が少なくなる傾向があります。実年齢とは必ずしもあっておらず、「卵巣予備能」が悪い場合は、妊娠を先延ばしにするとさらに妊娠する確率が低くなる、と予想することができます。初産年齢が高い現在では、特に有用な検査であると言えます。

FSH(卵胞刺激ホルモン)とは…脳下垂体から分泌されて卵巣に作用し、卵胞(卵子が入っている袋)の発育を促すホルモン。
FSH値は月経周期によって変動します。また基準となる低温期でも正常値が5~14mIU/mlと開きがあります。
卵巣の働きが悪いと高くなりますが、「何mIU/ml は卵巣予備能が高い」ということは正確には分かりません。

 

■AMH値と多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

通常の場合、月経周期の始めの頃は卵巣内にいくつかの卵胞が発育しますが、排卵時期が近づくとそのうちの1個だけが大きくなります。
これを主席卵胞と呼びます。主席卵胞はホルモンの刺激を受けて成熟し、排卵します。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵時期が近づいても主席卵胞が発育せず、卵巣内に小さな卵胞がたくさんある状態です。その結果
排卵が起こりにくくなり、不妊や無月経、稀発月経などの可能性があります。また、黄体ホルモン分泌不全により、月経過多や出血が止まらない、といった症状もみられます。一般にPCOSではAMH値が高くなります。

PCOS

 

■不妊治療とAMH値

卵巣の状態は不妊治療の成否に大きく関わってきます。AMH値が高いとき、つまり多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、卵巣過剰刺激症候群(OHSS:排卵誘発に過剰に反応して多数の卵胞が発育し、卵巣が腫れる状態)になりやすいので、排卵誘発法を調整して刺激を減らす必要があります。逆に、加齢や肥満、重度の子宮内膜症、卵巣嚢腫手術後等、AMH値が低いとき、つまり卵巣予備能力が低い状態では、卵巣への刺激が足りないと卵胞が育たないので刺激を増やす場合と逆に過度の負担を避けるため逆に弱い刺激を選択する場合があります。
また、卵巣予備能が低くなると刺激を増やしても反応しにくくなりますので、
AMH値が低い場合は早めに治療をステップアップすることをお勧めします。
このホルモンが少ない時は、卵巣予備能が低下していることを示唆します。つまり、実年齢が30歳でも、AMHが低ければ卵巣予備能は40歳のこともあります。

  • 一般不妊治療の時は…AMHが少ない時は、早く妊娠するように積極的な治療が必要となります。つまり、タイミングだけの時期を短くし、ステップアップを早くし、人工授精や体外受精に進むべきであることを示しています。
  • 体外受精の時は…AMHが低値の時は採取される卵子の数が少なく、受精卵が少なくなり、採卵辺りの妊娠率も低下することが予想されます。また、高値の場合は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性が高く、AMHの測定は調節卵巣刺激の方法を選択する時の一つの手段にもなります。


図:(株)医学生物学研究所様のホームページより転載

 

■検査対象の方について

下記の項目に当てはまる方は検査対象としてお勧めします。

  • 血中FSH値が高値である
  • 過去に卵巣(チョコレート嚢腫など)の手術を受けている
  • 血中FSH値が高値である
  • 過去に卵巣(チョコレート嚢腫など)の手術を受けている
  • 親族に早発閉経(40歳未満で閉経)の人がいる
  • 多嚢胞性卵巣症候群でART(生殖補助医療)を受ける予定である
  • 独身だが卵巣の予備機能が気になる
  • 不妊治療中である(特に35歳以上の方は必須)
  • 結婚はしているが妊娠は先にしたい(今の卵巣予備能から妊娠を先延ばしにできるかを知りたい)
  • ART刺激周期の前に測定し薬剤の種類や刺激投与量を決定する

不妊治療における治療方針に関わる検査ですので、当院では不妊治療をお受けになる方に必須の検査としております。また不妊治療をお受けになる予定のない方にとっても卵巣予備能力を知ることは、その方のライフスタイルにおいても重要な意味を持つと考えます。

 

■検査の時期・方法について

月経周期中のどのタイミングでも採血により測定可能です。 
AMHは通常のホルモン検査と同様に採取した血液サンプルからの測定が可能なので特別な処置は必要ありません。
尚、この検査は外注検査となるため結果の判定には7日間ほど要します。

 

■AMHの値と卵子の質の間に、直接の相関関係はない

なお、「AMHの値が低いからといって、必ずしも卵子の質が低いとは限らない」ので、この点はご安心ください。現在、卵子の質を評価する指標は実年齢以外にはありません。確かに、加齢とともにAMHの値が低くなり、高齢の方ほど卵子の質が低下している傾向にありますので、一見関係がありそうに見えますが直接の強い相関はないと考えられています。

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